ABOUT NAKAI LAB.
「古きモノ」の声を聴く
私たちのまわりは、さまざまな「古きモノ」に満ちあふれている。たとえば骨董品などのように、事物本来の役割を終え、別の価値をまとうことによって存在を保つモノもあれば、当初の役割を保ちながら、あるいは時勢の変化にあわせて巧みに変化させながら立派に「生きて」いるモノもある。「時は流れない。それは積み重なる」とは、かつてウイスキーのCMで人口に膾炙したキャッチフレーズだが、この言葉は一面の真理を突いている。現代にのこった「古きモノ」とは、過去のさまざまな時点における人びとの声や思いを積み重ねながら、そして今なお現在の私たちに有形無形の影響を及ぼす点において、立派な存在感をもってそこに「いる」のだ。
「地域歴史学」という看板を掲げつつも、地域資源マネジメント研究科の一部門としてこの研究室がめざすのは、「古きモノ」、具体的にはひろく「文化財」と呼ばれてきた事物を媒介にした、新旧の入り混じった空間を学問的に再構築することだ。「古きモノ」は私たちに何を語り得るのか、現代の私たちに何をなしのか、あるいは私たちは何のためにこれらと向き合うのか。歴史学や考古学の対象としてだけではなく、時の荒波を越えて眼前に「いる」古きモノと私たちが織り成す世界に目を向けて、地域資源マネジメント学の構築をはかる。