地域社会フィールドワーク

3週間ほど前の話になってしまいましたが、地域社会フィールドワーク1・2を実施しました。私が数年来細々と調査を手がけている、妙高山神池寺(丹羽市)を訪問し、山岳寺院の遺構を見学しながら、野外調査の方法の基礎を学びました。が、当日はあいにくの大雨。雨宿りしながらの巡見で、参加してくださった学生諸君は散々であったと思います。幸い、事故もなく無事に終わりました。

神池寺は奈良時代の開創と伝える、丹波屈指の古刹です。俗に「丹波比叡」ともいい、『太平記』には神池寺の僧兵が都で戦ったことが記されています。採集された遺物からみて、遅くとも鎌倉時代にはある程度の伽藍ができあがっていたことは確実です。

現在は広い境内に本堂や常行堂、行者堂などいくつかのお堂がのこるのみですが、踏査の結果、境内は現在の数倍におよぶ規模であったこともわかりました。昭和40年の台風23・24号で大きな被害を受けたのち、キャンプ場や会館がつくられたこともあって、中心部は大きく改変されていますが、本堂周辺にはいまなお坊院跡や石垣が良好にのこっています。

山中にのこる遺構をご紹介したいのですが、写真にすると樹木ばかりでよくわからなくなってしまうのが悩ましいところです。なので、境内の写真をいくつか(2枚目以下は、別日に撮影した写真です)。

常行堂前の宝篋印塔は、県の指定文化財となっています。下の写真は、俗に「蛇池」ともいい、大蛇伝説がのこる池。大蛇が退治された時に流れた血のために、「澄まずの池」といって現在も濁っているのだとか。現在は周囲が広いキャンプ場に造成されているので、伝説のような怖さは感じられません。

こちらは本堂です。左奥には行者堂があり、役行者をまつっています。この寺は、丹波修験の拠点でもありました。いまも夏に近隣の山伏が集まって柴燈護摩を実施しているそうです。

なかなかまとまった時間がとれないのが悩みなのですが、ご住職様のお許しを得て、調査を継続させていただいています。いまは境内の石造物の悉皆調査に入っているところです。

兵庫県立大学大学院 中井淳史研究室(地域歴史学)

"Nakai Seminar", Atsushi Nakai Lab. Graduate School of Regional Resource Management, The University of Hyogo. Medieval Archaeology, History, Theory for Historical and Cultural Heritage