THE出石焼展II

 10月1日まで、豊岡市立美術館(伊藤清永記念館)で標記の展覧会が開催されています。決して規模は大きくありませんが、こじんまりとしながらも優品が揃った見応えのある展覧会でした。

 昨年の展覧会でも感じたのですが、これほどのものが地域に人知れず? のこっていることには本当に驚きを禁じ得ません。真っ白な白磁ならともかく、江戸〜明治につくられた染付の類は銘でもなければなかなか出石焼と識別するのは困難です。そう考えると、まだまだ地域の旧宅に出石焼が眠っているように思えます。

 展示品のなかに、胴部を大きくくり抜いて、そこに梅枝をすえつけた花瓶がありました。これはかたちこそ花瓶ですが、胴部がくり抜かれているので、花生として有用とはいえません(せいぜい頸部に花をさせる程度でしょう)。いわば、道具としての本来的な機能を放棄した「花瓶」なのです。そこまでして、精巧にしつらえた梅枝(驚くべきことに、梅花の細いシベまで丁寧に再現されています)を見せるところに、私は制作者の強烈な思いを感じずにはいられませんでした。装飾としての梅枝はあくまでも生きている本物の梅枝の「模倣」にすぎません。たとえ寸分たがわぬものができたとしても、所詮は「つくりもの」でしかないにもかかわらず、模倣の極北を見極めんとする意志、ひいてはそれを可能にする己が技術の真髄を見せつけんとする意志。とにかく人間臭いというか、制作者の熱気がひしひしと感じられるのです。

 「物をして語らしめる」というのが考古学の本義ですが、これらは、こちらが何もしなくても勝手に語り出してくれそうな、まさにそんな焼き物たちです。40点の焼き物たちの雄弁な語りを聞くという、とても濃密な時間を過ごすことができました。

兵庫県立大学大学院 中井淳史研究室(地域歴史学)

"Nakai Seminar", Atsushi Nakai Lab. Graduate School of Regional Resource Management, The University of Hyogo. Medieval Archaeology, History, Theory for Historical and Cultural Heritage